感情を 肯定するという 暮らし方

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Eri Yoshida

日々を生きる上で、私たちは「元気じゃなければいけない」「ご飯は健康的でなければいけない」と「~じゃなければいけない」自分に葛藤することも多いのではないでしょうか。お酒を飲み過ぎてしまったり、落ち込んでしまったりすると罪悪感が浮かびます。今回、イラストレーターのヨシダエリさんから教えてもらったことは「感情を肯定する」という生き方。ヨシダさんの真摯に心と向き合うライフスタイルから、感情を生きる力に変える“静かな強さ”を見ることができました。

Introduction

第7回は関西を中心に活躍する若手イラストレーターのヨシダエリさん。大胆なラインと鮮やかな差し色で繊細な女性の感情を描きます。お洒落な画風と勇気づけられるメッセージ性に女性を中心にファンは多数。多くの女性の心に寄り添うヨシダさんのインスピレーションのルーツを探りました。

Made by

staff

photograph: Amiri Kawabe

interview&text: Kaori Hakozaki

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Section.01

制御されない線をスポイトで描く

大胆なようで、繊細さも感じるライン。スタイリッシュだけれども、どこか共感してしまう女性達。そんな作品を描くのは、イラストレーターのヨシダエリさん。「日常のふとした瞬間を飾らない表現で描いていきたい」と話します。インクのスポイトを用いた珍しい画風で、“制御されすぎず荒削りな、だけどどこか心を動かされるような線”が特徴です。
日々の生活の中で変化する感情、それを観察することがヨシダさんの仕事の一部。「ポジティブな感情はもちろん、ネガティブな感情も大切にしています。すべて見落とさずに拾い上げて、貯めておく。感情を受け入れて、作品に昇華したいと思っています」
誰にでも“他所向きの自分”と“自分だけの自分”があるもの。お酒を飲みながらの愚痴。夜中に食べるポテトチップス。頑張ってお洒落をした後の靴擦れ。眺めるだけでキュンとするアクセサリーやネイルアート。感情を制御せず受け入れるように、制御できないインクのスポイトを用いて描くヨシダさんの作品は、女性達の心に寄り添い勇気づけてくれます。

  • ヨシダさんの画法はインクのスポイトを使って制御されない線を描く珍しい方法。独特なタッチと鮮やかな差し色のスタイリッシュさに多くのファンが魅了されています。
  • 職場でのパンプスやハイヒールの着用強制をやめるように訴える運動のニュースを受けて、「履きたいものを履いていいんだよ」というメッセージ。

Section.02

“好き”と“素直さ”が成長の種

小さい頃から絵を描くことが好きだったというヨシダさん。少女漫画が特に好きで、登場人物の写生をしたり漫画を描いてストーリーを想像したりしていたのだそう。ところが、芸術大学の映像専攻へ進学してからは絵を描くことが疎遠に。芸術学科の学生たちの作品に圧倒され、いつしか自分も絵が好きであることが言いづらくなったのだとか。
Webデザイナーとして働くことになったヨシダさんがイラストレーターの道を歩むことになったのは、担当した仕事がきっかけだったそう。「ウェディング関連のWebデザインの仕事で手書きのラフデザインを描いたところ、ニューヨークで活躍しているアートディレクターの方に、『この絵、すごく好き!』と言ってもらえたんです。この出来事がすごく嬉しくて、また絵を描きたいと思うようになりました」そして絵について真剣に勉強するために、仕事の傍ら3年間イラストの専門学校へ。卒業後は職場に時短勤務を申請し、フリーランスとしてイラストレーターデビューを果たしました。
当初は雑誌に載っている女性を参考に“見た目だけが綺麗な絵”をよく描いていたそうですが、年に一度開催されるアートフェア『UNKNOWN ASIA』へ出展エントリーしたところ「個性が無い」とダメ出しをもらうことに。『寺子屋』という新人アーティストを応援するボランティアイベントでも、尊敬する講師陣から「今のままだと、綺麗なだけだ」と苦言を呈され、自分の個性について真剣に考えるきっかけになったのだとか。
その後は「悪い面も個性として捉えて、隠さずに出すのも一つ」というアドバイスをヒントに“女性のありのまま”を表現する現在の画風へ転向。UNKNOWN ASIA 2018では日本たばこ産業賞、宮川俊秀賞受賞と二つの賞を受賞するに至りました。
「Webデザイナーになりたての時は、ぼろくそに言われました。イラストレーターになっても「今のままでは二軍だ」と言われたことも。思い返せば順調だったことはありませんでした。それでも自分が成長できたのは周りが意見を言ってくれる環境だったから。今では感謝しかありません」当時の大変さを窺わせないクールな佇まいですが、その裏には仕事の傍らの技術習得、そしてダブルワークというハードな生活。ヨシダさんの“絵が好き”という情熱、そして“素直さ”が成長と個性獲得の種だったようです。

  • 昔からよく読んでいるという漫画の一つ。感情が丁寧に描かれている作品が特に好きとのこと。
  • UNKNOWN/ASIAの開催風景。10の国と地域から集まった約290組のクリエイターが出展するアートイベント。「大阪からアジアへ、アジアから大阪へ」のスローガンのもと若手クリエイターたちが出展を目指すのだそう。

Section.03

いつもポジティブじゃなくていい

「わたしたちきっと、大丈夫。」女性達を元気づけるこの言葉は、UNKNOWN ASIA 2019出展時のテーマです。
近年、女性の就業率は益々増加傾向。テクノロジーの進化によって利便性は上がっているはずなのに、家事に仕事にプライベートにと、忙殺されている女性は少なくないでしょう。「前向きでいなければ」とネガティブな感情に蓋をして見ないふりをする女性も多い中で、ヨシダさんのアプローチには自分の感情に素直に生きるためのヒントが散りばめられていました。
「一人の時間を大切にしています。休みの日は家でゆっくりレコードを聴いたり、集中力が切れたら家中を歩き回って植物に一つ一つ水をあげて観察するのですが、その時間がとても好きです。生活の中で出てきた小さな感情を見落とさずに心に貯めていきます。マイナスなインスピレーションを受けた時の方が、筆が進むことが多いです」
感情を丁寧に拾い上げているからこそのヨシダさんの作品。テーマを決める時は、特定の女性について細かにイメージを膨らませるそう。その時、女性にインタビュー等をすることはないと言います。「自分のことは、自分が一番わかっている。だからこそ、刺激に対してどのように感情が動くかがわかるんです。貯めた感情の引き出しから想像して集めて、作品に投影しています」感情の変化は誰にだってある。そんな当たり前のことを気付かせてくれたヨシダさんの作品から「わたしたちきっと、大丈夫。」もう一度この言葉を言ってもらえたようでした。

  • 自宅は心を休ませてくれる大切な空間。植物と触れ合う時間、レコードを聴きながらゆっくりと過ごす時間をこの部屋で。
  • 一見スタイリッシュでありながら、描かれているのは思わず共感してしまうような等身大の女性達。

Section.04

丁寧な暮らしから生まれる大切なもの

漫画と音楽が大好きだというヨシダさん。趣味がインスピレーションの源にもなっているそう。煮詰まった時には感情を丁寧に描いている漫画を読んで、作品のヒントにすることも。「自宅で仕事をすることが多いので、レコードやラジオを聴きながら作品作りをしています。雑音がある方がはかどることも多いです」クールな雰囲気を持つヨシダさんですが、よく聴くレコードはレゲエミュージック。リラックスしたい時に音楽を聴くことが多いそう。「レゲエは賑やかな曲が多いイメージがありますが、発祥地であるジャマイカはかつてイギリスの植民地であったという暗い歴史があって、反逆のメッセージを歌に込めた力強い曲も多いんです。音楽から感情をすくい上げることもあります」
一見とてもゆとりのあるように見える生活。しかし、イラストレーターの仕事は締め切りがつきもの。ゆっくりした時間をしっかり確保できる秘訣は、スケジュール管理能力にあるんだとか。「Webデザイナーという仕事柄、締め切りに対する感覚が鋭くなりました」心のゆとりからか、あんなことしたい、こんなことしたいとアイディアが次々と出てくるのだそう。一日をゆっくりと暮らすことが、モチベーションを保つ秘訣なのかもしれません。

  • ゆっくりするときも、仕事するときも聴いているというレゲエミュージックのレコード。「ジジッ」という針の音が好きなのだそう。
  • ヨシダさんの作品を生み出す仕事道具。インクのスポイトで制御されない線を描き、ダーマトグラフで鮮やかな色味を差し込みます。

Section.05

“感情が動くときに、風が吹く”

ヨシダさんのヘアスタイルはツヤのある黒髪が魅力のショートボブ。ヘアカラーをすることは滅多にないそうで、シンプルだけれども女性らしいヘアスタイルがとてもお似合いです。一方、作品に登場する女性達はボブスタイルの女性の他にもラフなロングスタイルやアレンジヘアなど様々。一体どのようなイメージで女性達をスタイリッシュに表現するのでしょうか。「ジブリ映画が大好きでよく見るのですが、宮崎駿さんが言った『感情が動いた時に風が吹く』という言葉がとても印象的でした。髪の長い女性を描く時には風を意識して描いています」髪を耳にかける女性。空を仰ぎ見ながらさらさらと流れだしそうな髪。髪の動きを感じながら作品を眺めると、自分がその女性と一体になったように感じます。
ポジティブもネガティブも感情をありのままに受け入れ、自分の力に変えてしまう生き方に強ささえ感じるヨシダさんの活躍に、これからも目が離せません。

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ヨシダさんの髪はとても健康的。そんな美しい髪を活かすなら、滑らかでつややかな髪へと導く「Class S Sb」。Class Sラインの中でもSbは“風になびく髪の女性”をイメージして作られたアイテムなのです。

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