国境を超えた 「美しい人」の 共通点

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Yukari Hara

世界で活躍する人の話を聞くと、距離を感じてしまうことが多くあります。特に女性であると、様々な先入観によって自ら『制約』を課してしまう人も少なくないでしょう。日本から丸一日ほどのフライトで到着するガーナ共和国。そこからさらに郊外へ飛行機と車を乗り継ぎやっと到着することができる自然豊かなボナイリ村でNGO法人を立ち上げ支援を続ける原ゆかりさんは、意外にも「天才肌」ではなく「努力家」タイプなのだそう。幼少期から今まで、たくさんの試行錯誤と周囲の支えによって、多くのことにチャレンジしてきた女性です。原さんのストーリーは、人は人によって磨かれ、「美しい人」になっていくことを教えてくれました。

Introduction

第12回は株式会社SKYAH CEO、ガーナNGO法人 MY DREAM. org共同代表の原ゆかりさんです。
東京外国語大学を卒業後、外務省に入省。在職中に米国コロンビア大学の公衆衛生大学院へ留学し、ガーナ共和国へのインターンシップ中にMY DREAM. orgを設立。退職後、総合商社ヨハネスブルグ支店に勤務しながらNGO活動にも尽力し、現在までアフリカの支援事業を続けられています。2018年には株式会社SKYAHを設立し、独立。アフリカ発の高品質な商品を日本へ輸入販売する「Proudly from Africa」の運営やアフリカ関連事業のコンサルティングをしています。非常に華々しいご経歴から、きっと厳しさも持ち合わせた方なのだろう…そんな予想とは裏腹に、実際にお話してみると屈託のない笑顔が印象的な女性がそこにいました。原さんから溢れているのは、様々な葛藤に悩みながらも、多くの出会いによって磨かれてきた女性の温かな美しさでした。

Made by

staff

photograph: Amiri Kawabe

interview&text: Kaori Hakozaki

hair&makeup: YUKO

rg

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支えてくれた人達

愛媛県今治市で生まれ育った原さんは、三人姉妹の長女。地頭が良いというよりも努力家タイプで、バスケットボールや英語などの好きな事にはトコトンのめり込むけど、苦手な教科はてんで駄目だったのだそう。「テスト勉強は自分で計画表を作って色を塗ることで達成感を覚えたり、自作の問題集に取り組んだりと、自分にご褒美を与えながらコツコツと取り組むのが好きでした。このような癖がついたきっかけは小学校の担任の先生との出会いかもしれません」毎日、自由に課題を決めてノートを一杯にするという宿題を出す面白い先生で、小さい頃から目に見える形で達成感を覚える喜びを味わっていたようです。

原さんのアイデンティティに影響した出会いは他にも。小学生から高校生までバスケットボールに熱中していた原さんは、長女ならではのしっかり者の性格を生かし、チームのリーダーとして活躍していたそう。ところが、メンバーの気持ちを汲み取ることができずに、チームが分裂しかけてしまいそうになったことも。「相手の気持ちにうまく寄り添えず、鬱陶しいリーダーだったかもしれないと今なら思えるのですが、当時はどうしたらいいかわからず、バスケットボールに夢中になることで発散していました。お姉ちゃんだからしっかりしなきゃ、と親にも話さず抱え込んでいたところに寄り添ってくれたのが、小学生時代のバスケットコーチでした」自分の在り方を模索し軌道修正を重ねたことで成長してきたと、原さんは言います。

そんな原さんは中学生のある日、途上国のドキュメンタリー番組を見て衝撃を受けたのだそう。「自分の妹と年齢の変わらない子が、ゴミ山の鉄くずを集めて売ることで、やっとの生活をしていたんです。テレビの中の世界が自分のリアルと一致しないことに違和感を覚え、他人事とは思えませんでした。当時は非力で何をすることもできませんでしたが、世界情勢に興味を持ち始めたのでまずは英語を勉強しよう!という発想に繋がりました。

原さんが今も昔も変わらないことの一つは『自分ごとにしないと動けないこと』。漠然とした問題やテーマの中に、想像できる人や友人の顔が見えるかがモチベーションに大きく影響するのだそうです。原さんが過去の話をする時にはいつも、「周りの人」の存在が大きいことに気づかされます。

  • 原さんは3人姉妹の長女。一緒にNHKのドキュメンタリー番組を見ていたのは年齢の離れた一番下の妹で、いつも面倒を見ていただけに衝撃を受けたと言います。
  • 小学生の時に付けていた課題ノート。取材がきっかけでノートを見返したところ、六年生の時にガーナについて調べていたことが分かりました。青年海外協力隊の方がガーナのお話をしてくれたことがあったのだそうです。

Section.02

ありがとうの連鎖

原さんは現在、ガーナ北部ボナイリ村に設立したガーナNGO法人MY DREAM. orgの共同代表を務めており、様々な支援を行っています。MY DREAM. org設立のきっかけは、“恩返し”なのだと原さんは言います。

外務省で行政の経験を積み、大学院で一年間勉強してきた自分ならば何か役に立てるに違いない。そう意気込んで向かったインターンシップ先のボナイリ村では、当然言葉も通じず、文化も初めての経験だらけ。水を飲むにしても、人口2000人で二つの蛇口をシェアしているために10kgの水樽を頭に乗せて運ばなければいけなかったり、料理をするにも薪から火を起こす必要があったりして、村の人達の助けがないと生活ができない状態だったのだとか。ボランティアで来たつもりが、温かい村人からの支援を受けてようやく暮らすことが出来たと感じる程だったそうです。村に滞在し1ヶ月が過ぎた頃、お礼をしたいという原さんに対し、ボナイリ村の方から出た言葉は「家族みたいなものだから、いらない」の一言でした。

村の人々の温かさを一身に受け、「それでもなんとかして恩返しをしたい」と強く思った原さんは、村の方々に困りごとを聞いて回ったところ、この村が抱える重要な課題が浮かび上がってきたそう。「大人は働きに出るために幼稚園へ子どもを預けますが、そこは屋根のない青空幼稚園。雨季になると2、3ヶ月雨が降り続けるため、子どもの行き場所が無くなってしまうんです。幼稚園を稼働するシステムはあるのに、建物が無いことが大きな問題でした」そこで原さんたちはWEBサイトを作り、幼稚園の建設費30万円を募ることに。当時は現在のようなクラウドファンディング専用ページも無かったため、日本やアメリカ、ガーナの知人・友人を中心に声がけをし、集めた寄付で幼稚園の建物を作りました。村への恩返しの行動が、たくさんの「ありがとう」を生む結果につながったのです。

「ガーナでも日本でも、コミュニケーションでは『3分の2は話を聞く』ことを心掛けています。これはボナイリ村の生活の中で身につきました。彼らの話をよく聞いていると、“自分にとっての当たり前”が“村の人達にとっての当たり前“と乖離していることに気づきます。文化が同じ日本でも、話をよく聞くことで本当に必要なことが見えてくることに気づきました」

原さんは現在もボナイリ村への支援を行っていますが、目指すビジョンは「寄付からの自立」。村の人達が自分たちの手で「子どもが夢を追いかけられる環境」を作るための仕組みづくりを試行錯誤しているそう。例えば、裁縫の技術を持つ女性を育て、色彩豊かなアフリカンプリントの布でバッグやエプロンの製造や販売をしたり、古くから伝統的に行われてきた手作りの未精製シアバターを化粧品原料として卸したりなどです。そこから得られる収益を原資に、子どもたちを取り巻く教育や保健・衛生環境の向上のために充てていきます。これまでに、幼稚園以外にもクリニックや中学校を整備してきました。そして現在村のメンバーが計画を立てているのは、職業訓練所の設立だそうです。原さんが生み出した『ありがとうの連鎖』は、子どもの代、孫の代へと、きっと続いていくことでしょう。

  • 村で伝統的に伝えられてきたブラックソープを作っている様子。カカオの実の果肉を取り除き、燃やしてできた灰を煮詰めて出来るアクをアルカリ剤として、ドロドロに溶かしたシアバターとハーブオイルの混合物に入れて石鹸を作ります。
  • アフリカンプリントを用いた製品作りを行う村の女性達。初めは5人しかいなかった縫い子達は13人に増え、それぞれが工夫をして商品づくりに励んでいるのだそう。

Section.03

心地いいように気持ちを持つこと

支援事業に会社経営と二足のわらじを履いている原さんですが、お休みを取ることも大切にしているそう。一日中漫画を読んだり、映画を見たりなどソファでゆっくり過ごすこともあれば、最近は休日にランニングでリフレッシュすることも自分へのご褒美なのだとか。

「料理は昔から好きで、レシピ本などは見ずに感覚で作っています。料理もトライアンドエラーの繰り返しです。アフリカ各地に住んでいた時には見たことのない食材やスパイスがたくさんあったので、買ってみて実験しながら美味しい調理法を探していました」

どこに住んでいても、息抜きやバランスのいい食事、適度な運動が自分をしっかりマネジメントする秘訣のよう。

原さんの心身を整える秘密はもう一つ、「心の持ち方」にありました。「ボナイリ村での生活は不便が当たり前。停電や断水は頻繁に起きるので、村の人達は携帯をこまめに充電したり、お水は貯めておくなどの工夫をして過ごしています。意外かもしれませんが、現地には悲壮感は無く、皆笑い絶えない生活をしています。不便かもしれないけど、色々な工夫をしながら明るく助け合う様子が、とても印象的でした。ボナイリ村での生活から、『どのような時でも前向きな考え方を持つ大切さ』を教えてもらいました」

日頃からストレスをためない、心身ともにすこやかな状態をキープする原さんだからこそ、太陽のような笑顔が溢れ出ているのかもしれません。

  • アフリカ南部の内陸部にあるエスワティニ(旧スワジランド)発のブランド「QUAZI DESIGN(クアズィ・デザイン)」のリサイクルピアス。古紙を再利用したデザインがアクセントに。作り手の多くは無職だった女性で、雇用創出にも貢献しているそう。
  • 原さんが一目惚れしたという、ご褒美のバッグ。産業が衰退しつつある絨毯生地や、通常は廃棄される食用牛をレザーに採用したりなど、サステナブルな哲学の元に作られているのだそう。
  • 村の女性たち手作りの未精製シアバターと、バオバブオイルから作られたボディクリーム。ホイップのようにふんわりと柔らかいテクスチャーで、顔にも身体にも使いやすく高保湿機能が魅力です。
  • MY DREAM. orgのロゴが付いたショップバック。デザインにもなっているテキスト入りの柄は“小麦粉の袋“を再利用しているから。村の女性達が原価を下げるために、見つけ出してきたアイディアなのだそう。「MY DREAM. orgを卒業し、オリジナルブランドのロゴを付けること」が彼女たちの夢になっているのだとか。

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「やってみないとわからない」続く挑戦

原さんはボナイリ村への支援事業MY DREAM. orgの他に、アフリカ発の高品質商品を日本へ輸入販売する『Proudly from Africa』の運営もしており、MY DREAM. orgを通じて経済的自立を果たした人たちが活躍できる出口戦略の一つにもなっています。ご活躍は枚挙に暇がありませんが、「そう見えるのは、現地に対等なパートナーがいたから」だと原さんは言います。村のリーダーであるザックさんを中心に、プロジェクトのPDCAは村の人達が自主的に実行。わからないことは原さんが専門家にアドバイスを求めたり調査をするなどして、事業を動かすことが出来る人たちに恵まれた結果なのだとか。「もし私が一人で全てをこなさなければならなかったら、早々に諦めていたかもしれません。お互いの役割分担が明確だから、信頼できるパートナーとしていい関係を続けることができています」

ボナイリ村のリーダー・ザックさんや『Proudly from Africa』のブランドオーナー達、様々な方との出会いは、原さんの行動力があればこそ。2020年には渋谷の展示会で日本のメディアやバイヤーにお披露目し、催事やポップアップで触れていただく機会も増えたのだそう。

「新しいことをしようと思うと、周りから『そんな無謀なこと』と言われることもあるかもしれません。最近はワンクリックで情報が入ってくるので、挑戦しようとするや否や制約も見えやすい環境です。最近、若い方に向けて講演や授業の機会がありますが、その時に必ず伝えることがあります。『そんなの無理かどうか、やってみないとわからない』ということです。」原さんのお話はとても綺麗にまとめられるものではなく、沢山の試行錯誤の連続でした。そして今でも悩み、向かい風で逃げたくなることもあるのだと言います。

「10年後、20年後の自分がどうなっていたいかビジョンが明確な訳ではありません。今の私は、多くの方々との出会いが作ってくれました。これからも、心がわくわくする出会いを積み重ねていきたいです」国境をまたいで活躍する原さんの挑戦は、まだまだ続くようです。

  • 株式会社SKYAHが運営するセレクトショップ「Proudly from Africa」では、高品質なMADE IN AFRICA製品のみを厳選。日本では、ECサイトや取り扱い店舗、展示会を通じてその魅力を伝えています。
  • ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連の女性機関UN WOMEN主催のイベントに登壇している原さん。女性や子どもが夢を持ち、叶えることができる環境を作るための活動をされています。

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「美しい人」の共通点

ガーナの首都・アクラなど都会の女性達は日本と変わらずスキンケアやヘアケアを楽しんでいる一方で、ボナイリ村の人々は「自然の恵み」をふんだんに生かした伝統的な美容法を取り入れていると言います。村にはシアやバオバブ、モリンガの木が自生しており、「あるものを使わなくてどうするの?」と言えるほど魅力的な素材が豊富なのだとか。田舎では昔から、火傷や傷の薬として自然のめぐみを活用してきたそうで、村で出会った未精製シアバターは今でも原さんのお気に入り。顔だけでなく、ヘアやボディ等全身に使うこともあるそうです。原さんがガーナで出会ったバイオレットという女性は生まれも育ちも都会でアメリカへの留学経験もありますが、自国に魅力的な素材があることに気づき、今では自然のめぐみと出会う旅をしているほどです。

最後に、様々な国に在住経験を持ち、多くの出会いを重ねてきた原さんに「国境や人種を超えた美しい人」について聞いてみました。

「今、顔が思い浮かぶ何人かの美しい女性には共通点があります。様々な葛藤がある中でも、しっかりと信念がある人。失敗しても、立ち上がって道を切り開いていく人。誰かの目標となるような女性が、美しく輝いているように思います」

そう答える原さんの真剣な顔は、美しさがにじみ出ているようでした。

  • 村の女性がシアの実を洗っている写真。自生しているシアの木から落ちてきた実の種を取り出し、乾燥させて原料にするそう。自然の恵みを余すこと無く使うのがボナイリ村の伝統。
  • MADE IN GHANAのコスメブランド『SKIN GOURMET(スキングルメ)』を経営するバイオレットさんとのツーショット。出会いは原さんの一本の電話から。ボナイリ村の高品質なシアバターを供給するきっかけになったそう。

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普段のヘアケアでもシアバターを使っているという原さん。冬には毛髪の乾燥による静電気が気になるそうです。

「Class S Rg」はシャンプー・トリートメントを組み合わせて使うことでしっとり感が際立つ「ユニット処方」。Wタウリンが髪の芯までたっぷりと浸透しながら、グロスコートがうるおいをキープすることで艷やかな髪へ導きます。

乾燥や紫外線などの外的刺激から髪を守る保湿成分のコメ発酵エキスやハス花エキスは、外での活動が多いガーナでの生活にもぴったり。

ナチュラルでやさしい香りがお好きな原さんもお気に入りの「フローラルシトラス」は、南仏グラースの調香師による天然由来100%の自然な香り。今日一日のご褒美に、爽やかな甘い香りでリラックスタイムを提供します。